XFELと100J級のナノ秒ハイパワーレーザーを組み合わせることで、ハイパワーレーザーによって作り出せる超高圧力状態にある物質を超高速に診断することができます。本ページでは、BL3 EH5におけるハイパワーナノ秒レーザー利用実験について紹介します。
※ハイパワーナノ秒レーザー装置は、大阪大学が中心となって整備されました。
※この実験システムは、ハイパワーナノ秒レーザーのユーザーグループと共同で開発整備されました。一部のシステムの高度化は、SACLA基盤開発プログラムの課題(代表者:大阪大学 尾崎典雅准教授)として実施されています。
参考文献:
Y. Inubushi et. al., Appl. Sci. 10, 2224 (2020).
基本性能・成果
衝撃圧縮されたコランダムのX線回折計測
計測例として多結晶コランダムのX線回折データを示します。ナノ秒ハイパワーレーザー照射によって圧縮されている様子が観測できています。
試料チャンバ内に設置できるフラットパネルディテクタを用いることによって広い角度範囲(回折角: 18–78°、方位角:+/-60°)での計測が可能です。

レーサー集光条件および生成圧力
典型的なレーザー集光スポットサイズは200–300 µm程度、照射強度は~1 × 1013 W/cm2程度までであり、固体試料の場合、数100 GPaの圧力の生成が可能です。
実験装置
試料チャンバ
ナノ秒ハイパワーレーザー実験には、SACLA BL3の最下流、実験ハッチEH5内に常設されている真空試料チャンバを使用します。この試料チャンバ内に設置した試料にXFELとナノ秒ハイパワーレーザーを照射して実験を行います。


試料駆動機構および試料ホルダ
試料チャンバ内に、試料をアライメントするための多軸ステージが常設されています。
標準の試料ホルダシステムは試料を固定する短冊状(100 mm × 10 mm)のサンプルプレートとそのサンプルプレートを固定するフレームから構成されています。フレームは磁石式のキネマティックベースによって駆動機構と接続されます。試料ホルダシステムは実験に合わせて変更することができます。


運転パラメータ(EH5@BL3)
XFELパラメータ
| 光子エネルギー(基本波) | 4-20 keV |
| パルスエネルギー | 光子エネルギーに(下図参照) |
| エネルギー幅(ΔE/E) | ~0.5%(ニ結晶分光器なし) |
| 繰り返しレート | 30 Hz(BL2&3同時運転時) |
参考文献:
M. Yabashi et al., J. Synchrotron Rad. 22, 477 (2015).
K. Tono et al., J. Synchrotron Rad. 26, 595 (2019).
(参考)光子エネルギーとパルスエネルギー・光子数の関係(BL3の場合)

X線集光特性
X線回折の分解能を担保するために、縦方向の発散角は1 mrad以下となるよう設計された下記のKBミラー光学系を利用して、実験に合わせてXFELの集光サイズを調節することが可能です。また、片側のミラーのみを用いることで、X線を一次元に集光することも可能です。
非集光の場合の典型的なXFELビーム径は600 µm(半値全幅)であり、四象限スリットによって任意のサイズに調整可能です。
| Optical parameters (KB mirrors) | Vertical | Horizontal |
| Surface coating | Rhodium | Rhodium |
| Substrate size | 300 × 50 × 50 mm | 400 × 50 × 50 mm |
| Glancing angle | 4.0 mrad | 3.7 mrad |
| Focal length | 1200 mm | 800 mm |
| Distance from source | ~260 m | ~260 m |
| Spatial acceptance | > 1.2 mm | > 1.4 mm |
| Divergent angle | ~1 mrad | ~2 mrad |
| Typical focal size @10keV | ~430 nm FWHM | ~480 nm FWHM |
参考文献:
Y. Inubushi et. al., Appl. Sci. 10, 2224 (2020).
光学レーザー特性
| ハイパワーナノ秒レーザー | |
| Wavelength | 532 nm |
| Pulse Energy (Max.) | ~15-20 J(5 ns矩形波)* |
| Rep. Rate | 0.1 Hz |
*最大エネルギーはパルス波形に依存します。記載している値はサンプル位置における値です。
標準的な実験配置
X線計測手法例と実験配置
X線回折
- XFELをプローブとした、ナノ秒ハイパワーレーザーが照射された試料からの広角X線回折計測。
- 検出器には試料チャンバ内に設置できるフラットパネルディテクタ(シンチレーションCMOSカメラ)またはチャンバ外に設置できるDual-MPCCDが使用可能。
- フラットパネルディテクタを使用する場合、反射配置と透過配置での計測が可能。



小角X線散乱
- XFELをプローブとした、ナノ秒ハイパワーレーザーが照射された試料からの小角X線散乱計測。
- 試料チャンバ下流に検出器を設置。
X線イメージング
- XFELをプローブとした、ナノ秒ハイパワーレーザーが照射された試料のイメージング計測。
- 試料下流に検出器を設置。
光学計測手法例と実験配置
速度干渉計測(VISAR)
- 光学レーザーをプローブとした、ナノ秒ハイパワーレーザーが照射された試料の速度計測。
- 回折計の回転ステージ(Circle stage, θx)に設置されている光学系を利用可能。
放射輝度温度計測(SOP)
- ナノ秒ハイパワーレーザーが照射された試料からの自発光輝度温度計測。
- 回折計の回転ステージ(Circle stage, θx)に設置されている光学系を利用可能。
測定までの調整作業
ビームタイムまでにSACLAのスタッフが行うこと
- ナノ秒ハイパワーレーザーの試料チャンバへの導入
- 施設装置のセットアップ、初期アライメント
- XFELスペクトル、光軸、集光調整
- XFELとナノ秒ハイパワーレーザーのおおまかな空間合わせ
- XFELとナノ秒ハイパワーレーザーの高速PDを用いた時間合わせ
ビームタイム開始後にユーザーが行うこと
- XFELとナノ秒ハイパワーレーザーの精密空間合わせ
- 常設装置の精密アライメント
- ユーザー持ち込み装置の精密アライメント
- XFELとナノ秒ハイパワーレーザー、計測器の精密時間合わせ
- 試料のアライメント
- XFEL、ナノ秒ハイパワーレーザーの照射
- 計測機器のオペレーション
測定手順
ビームタイム初期調整終了後は、典型的には以下の手順で実験を行います。
- 試料チャンバ内への試料の設置
- 試料チャンバ真空引き
- ナノ秒ハイパワーレーザーと試料の相互作用点決定
- ナノ秒ハイパワーレーザーのポインティング調整
- 計測機器の調整
- 試料アライメント
- データ取得ショット
- 試料チャンバ大気解放
SACLA標準の検出器のデータは、SACLAのHPCを利用してアクセス可能です。