XFELを使った物質科学研究では、X線回折法と同期レーザーを組み合わせた、ポンプ・プローブ(時間分解)X線回折実験が多く実施されています。本ページでは、SACLAにおける時間分解X線回折実験について紹介します。
基本性能・成果
Biのコヒーレントフォノン測定例
波長800 nmの超短パルスレーザーを励起光として、Bi薄膜の(111)回折強度の時間変化を測定

モット絶縁体Sr2IrO4の磁性変化の観測
波長2 μmの超短パルスレーザーを励起光として、Sr2IrO4の磁気回折強度の時間変化を測定
M. P. M. Dean et al., Nature Materials 15, 601 (2016).

実験装置
Huber回折計
SACLAでは共用多軸回折計としてHuber社の4-Circle Diffractometer 5042を使用しています。試料を取り付けるゴニオメータは同じくHuber社のGoniometer Head1003-MSを標準としています。

サンプルホルダー(ゴニオピン)(資料添付予定)
その他の回折計
Huber社の回折計以外にも、KOHZU社のステージを組み合わせたセットアップなども構築可能です。例として、以下に示すようなdiffuse scatteringの実験実績があります。詳細はXFEL利用研究推進室(sacla-bl.jasri@spring8.or.jp)までお問い合わせください。

検出器
X線回折実験では、主にMPCCDを検出器として使用しています。アライメントのためにPhotodetector(PD)や2次元検出器であるDIFRASを使用することも可能です。
冷却関連
試料を冷却し、室温以下の温度で測定するために、下記の冷却装置が使用可能です。
液体窒素吹き付け装置
液体窒素を用いた吹き付け型冷却装置として、Oxford Cryosystems社製Cryostream 800 Plusが使用できます。制御可能な温度範囲は約100~400 Kです。

気体窒素吹き付け装置
大気中の窒素ガスを用いた吹き付け型冷却装置として、Rigaku社の吹き付け装置が使用できます。制御可能な温度範囲は約100 K~室温です。

GM冷凍機
GM冷凍機を上述のHuber回折計に搭載し、広い入射及び出射角度を保ちながら試料の冷却が可能です。制御可能な温度範囲は約10 K〜室温です。
Y. Kubota et al., Applied Physics Letters 122, 092201 (2023).

ソフトウェア
回折計の制御ソフトとして、Certified Scientific Softwareのspecが使用可能です。
運転パラメータ(EH2@BL3)
時間分解X線回折実験は主にBL3のEH2で実験を行っています。
XFELパラメータ
| 光子エネルギー(基本波) | 4-20 keV |
| パルスエネルギー | 光子エネルギーに(下図参照) |
| エネルギー幅(ΔE/E) | ~0.5%(ニ結晶分光器なし) |
| 繰り返しレート | 30 Hz(BL2&3同時運転時) |
参考文献:
M. Yabashi et al., J. Synchrotron Rad. 22, 477 (2015).
K. Tono et al., J. Synchrotron Rad. 26, 595 (2019).
(参考)光子エネルギーとパルスエネルギー・光子数の関係(BL3の場合)

X線集光特性
| Optical parameters (CRLs) | |
| Material | Beryllium |
| Shape of lenses | Paraboloid |
| Radii of curvatures (R) | 200, 500 µm |
| Maximum number of lenses | 31 with R = 200 µm 15 with R = 500 µm |
| Focal length | 2.5 m |
| Spatial acceptance | > 0.9 mm |
| Divergent angle | > 0.1 mrad* |
| Typical focal size @10 keV | 1-2 µm FWHM* |
*使用するレンズの数や波長に依存します。
参考文献:
T. Katayama et al., J. Synchrotron Rad. 26, 333 (2019).
光学レーザー特性
| 基本波 | 2倍波 | 3倍波 | 4倍波 | |
| Wavelength | 800 nm | 400 nm | 267 nm | 200 nm |
| Pulse Energy (Max.) | ~12 mJ | ~0.5 mJ | ~0.2 mJ | ~0.02 mJ |
| Pulse Duration | ~40 fs | ~30 fs | ~50 fs | |
| Rep. Rate | 60 Hz | 60 Hz | 60 Hz | 60 Hz |
上記に加え、光パラメトリック増幅器(OPA: Optical Parametric Amplifier)からの光を利用可能です。使用可能な波長域は0.25-2.6 µmで、下図のようにパルスエネルギーは波長に依存します。

(参考)
低光子エネルギーのXFELを使用する実験、小さなビームサイズが必要な実験などに対しては、KBミラーが常設されたEH4cも使用可能です。詳細は以下のページをご参照ください。
測定までの調整作業
ビームタイム前までにスタッフ行うこと
以下の作業はビームタイム前にSACLAのスタッフが行います。
- 装置を実験ハッチに搬入
- XFELのスペクトル、光軸、集光の調整
- 同期レーザースペクトル、光軸、集光の調整
- XFELと同期レーザーのラフな空間合わせ
- 高速PDを使ったXFELと同期レーザーのタイミング調整(精度は±10 ps程度)
- タイミングモニターの調整
ビームタイム開始後にユーザー自身が行うアライメント
時間分解X線回折実験を行うために、ユーザー自身に行っていただく、最低限のアライメントを以下に示します。
- 回折計の回転中心出し
- 回転中心をXFEL照射位置にアライメント
- XFELと同期レーザーの空間合わせ(例:Ce:YAG)
- XFELと同期レーザーのタイミング合わせ(例:Bi、Ce:YAG)
測定手順
アライメント後に行う、実際の測定手順例を以下に示します。
- 試料をゴニオメーターに設置
- ゴニオメーターのモーター軸を使って回転中心に試料を移動
- 試料下流に設置したPDを使って半割り
- 目的の回折ピークへ回転軸の角度を調整し、MPCCDでピークを探索
- 同期レーザーを入射し、タイミング0の前後で変化を確認
- ディレイステージをスキャンすることで、時間分解測定を実施
- 最終的にはRunControlでスキャンを実施し、MPCCDとタイミングモニター(OPAL)の画像データを保存
- タイミングモニターを用いて、ショット毎のジッターを補正
マニュアル他
(RunControlの使い方等含めたものに更新予定)
タイミングモニター(ページ作成予定?)
さらに詳しい解析手法を知りたい方はSACLA HPC Portal site (VPN接続が必要です)をご参照ください。